インドシナ半島に位置するタイの正式国名は「タイ王国」で国王のいる立憲君主国です。ヨーロッパ列強が進出して植民地化が進む中で、イギリス植民地とフランス植民地の緩衝国として唯一独立を保った歴史があるタイですが、近年は工業化が著しく経済発展をとげています。
そんなタイについて、自然や文化、産業など地理的特徴をまとめていきます。
タイの国土と住民
タイの面積は51万㎢と日本より広く、国土の大半はインドシナ半島の中部を占めており、西側はミャンマー、北東側はラオス、南東側はカンボジアと国境を接しています。南はマレー半島北部に細長く続いておりマレーシアと接しています。
中央部を南北にチャオプラヤ川が流れて中下流部に平原を形成しており、河口近くに首都のバンコクがあります。
人口は約7000万人で大半がタイ人ですが、他には華僑の子孫である中国系、さらに国境近くには隣国と同じ民族も居住しています。
タイは仏教文化の国
タイ人の多くが仏教を信仰している典型的な仏教国ですが、日本の仏教とはちがって上座部仏教と呼ばれる仏教です。戒律を厳格に守る仏教で個人の修業が重んじられ、出家して悟りを開いた者だけが救われるという考えを基に成り立っています。一方、民衆全体を救い誰でも悟りを開くことができると考えるのが日本などに伝わった大乗仏教と呼ばれる仏教です。
タイにはどんな小さな村でも寺院があり、タイ全土で約3万もの仏教寺院があります。タイでは出家することが最大の功徳と考えられており、男子は出家して初めて1人前として認められるのです。現在でも約40万人の僧侶が戒律に基づいた生活を送っており、黄衣をまとった僧侶の姿をいたるところで見ることができます。
特に地方では寺院は集会所や学校、病院を兼ねた場所になっている場合も多く、冠婚葬祭などの儀式には必ず僧侶が呼ばれるなど、仏教が生活に根付いています。
国土全体が熱帯のタイの気候
気候的にはタイの国土全体が熱帯に属しています。大半が雨季と乾季のはっきりしているサバナ気候ですが、マレー半島の部分など一部は乾季が弱く熱帯雨林気候に近い所もあります。
サバナ気候の地域では、南西モンスーンの季節である5月から10月が雨季になり、北東モンスーンの吹く11月から4月までが乾季になります。首都のバンコクの年平均気温は29℃近くになりますが、月別の平均気温を見ると雨季がはじまる直前の4月が最高になっています。これは雨季になると降水で気温が少しやわらぐためで、インドでも同様の特徴があり、典型的なモンスーンの国に見られる気候の特色です。
タイは伝統的な米の輸出国
タイではチャオプラヤ川の流域を中心に米の生産がさかんで、特に下流部のデルタ地帯では古くから商業用の米作りが行われ、バンコク米として輸出されました。その取引には華僑の人たちが多く従事しており、現在でもタイは米の輸出が世界第1位(2016年)で米が不足しているアジアの国々へ輸出されます。
熱帯作物の栽培もさかんで、天然ゴムは生産、輸出とも世界第1位(2016年)で世界の3分の1の生産を誇っています。サトウキビやアブラヤシ、ココヤシなどのヤシ類の栽培も多く、砂糖やヤシ類から採れるパーム油やコプラといった植物油の生産も世界の上位です。
日本にも輸出される養殖エビ
チャオプラヤ川の河口付近やマレー半島北部の沿岸ではエビの養殖がさかんで、マングローブ林を切り開いた養殖場で多くのエビが養殖されていますが、それらは日本にも多く輸出されています。
われわれ日本人が食べるエビフライや天丼、天ぷらうどんのエビは、ベトナム、インド、インドネシアやこのタイなどアジアの熱帯諸国から多く輸入されているのです。
一方、これらの国にあるマングローブ林は漁場などの豊かな生態系を育み、高潮や暴風などの自然災害を防ぐ防災林の役割もある貴重な森林ですが、養殖場建設のために、その豊かな生態系が破壊されるという環境問題も指摘されています。
タイでの著しい工業の発展
米作を中心とした農業が産業の主体であったタイですが、近年は工業化が進んでいます。バンコク周辺には多くの工業団地が建設され、低いコストを求めて日本の企業も多く進出しています。ちなみに、東南アジアへの工業における日本企業の進出数が最も多いのがタイです。
特に自動車工業の発展は著しく、電気機械工業なども含めて工業が発展しています。そのため、現在のタイの輸出品は米などの農産物に代わって機械類や自動車など工業製品が上位を占め、貿易額も東南アジアのASEAN諸国の中ではシンガポールに次ぐ(2016年)多さになっています。
タイの地理要点まとめ
- インドシナ半島中央部からマレー半島北部へ続く国土の真ん中を南北にチャオプラヤ川が流れる。
- 仏教徒が多く生活の中に仏教文化が根付いている国ですが、タイの仏教は戒律を厳格に守る上座部仏教。
- 国土全体が熱帯に属し、その大半がサバナ気候でモンスーンにより雨季と乾季がはっきり分かれる。
- チャオプラヤ川流域を中心に米の生産が多く、米の輸出は世界第1位(2016年)。
- 天然ゴムの生産は世界第1位(2016年)で、サトウキビやアブラヤシから採れるパーム油の生産も多い。
- 沿岸部のマングローブ林を切り開いて造られた養殖場で養殖されたエビは日本にも輸出される。
- 自動車など工業化も著しく輸出品の上位を占め、工業での東南アジアへの日本企業進出数はタイが最も多い。
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