第二次大戦後の東西冷戦時代は資本主義陣営の西ドイツと社会主義陣営の東ドイツに分かれていたドイツですが、1990年に東西ドイツが統合されました。現在ではヨーロッパ第1の工業国で、GNI(国民総所得)はアメリカ、中国、日本に次ぐ世界第4位、ヨーロッパ第1位の経済大国でもあります。
そんなドイツについて、自然や産業、文化など地理的特徴をまとめていきます。
ドイツの国土と住民
ドイツの面積は東西統合により36万㎢となりましたが日本よりやや狭い国土で、人口は約8200万人とロシアを除いてはヨーロッパ最大になっています。ゲルマン系ドイツ人の国で、宗教的にはキリスト教が中心ですがカトリック(旧教)とプロテスタント(新教)の割合はほぼ半々です。
一方でドイツは移民に寛容な政策を続けており、移民が多い国でもあります。1960年代の工業発展時代に多くの出稼ぎ労働者を受け入れたことに始まりますが、その労働者たちが家族を呼び寄せて定住したことで移民が増加したのです。
中でもトルコ人は現在のドイツの人口の3%以上を占めています。EUの加盟国からの流入も多く、近年では内戦の続くシリアなど中東からも増加して、ドイツでは移民問題が大きな課題となっています。
ドイツの地形と気候
ドイツの地形は変化に富んでいます。北海とバルト海に面する北部には北ドイツ平原が広がります。中部から南部にかけては丘陵地帯が広がりフランスやチェコとの国境付近には古い山地が残っていますが、フランスとの国境に近いシュバルツバルト(黒森)は見事な人工林で知られる山地です。
そしてドイツ最南東部はスイスから続くアルプス山脈の一角をなし、オーストリアとの国境になっています。アルプス山脈から流れ出るヨーロッパの二大河川のライン川が西部を、ドナウ川が南東部を流れています。
ライン川の中流域には伝説の岩山ローレライやラインシュタイン城をはじめとする数多くの古城があり、その美しい風景を見ることのできるライン川下りは観光客で賑わいます。歴史と文化が複合したこのライン川中流渓谷は世界文化遺産に登録されています。
【ローレライ】
【ラインシュタイン】
ちなみに、ドイツは歴史的な建造物の宝庫でもあり、世界文化遺産に多く登録されています。ドイツの世界遺産の数は46(2019年)と世界第4位で、そのうち文化遺産が43を数えます。
一方、気候を見てみるとドイツのほぼ国土全体が西岸海洋性気候になっていますが、偏西風の影響はイギリスより弱く、首都のベルリンも大陸性の気候の特徴をもち、1月の平均気温が0.9℃とイギリスのロンドンにくらべると冬はかなり冷え込み、年降水量もやや少なくなっています。
典型的な混合農業の国
ドイツでは農耕と家畜飼育を結びつけた混合農業が広く行われています。北ドイツ平原は冷涼で氷河の影響を受けたやせ地が広がるため、小麦より悪条件に強いライ麦の生産が多く、ジャガイモなどの飼料作物と組み合わせて輪作で栽培されています。ちなみにライ麦の生産は世界第1位(2016年)です。
中部の丘陵地帯では小麦の生産が多くなり、しぼりかすが飼料になるテンサイなどと輪作が行われます。土地を区切って、それぞれの区画に毎年異なる作物を順に栽培する輪作は連作障害を防いで地力を保つ農法です。
飼料作物によって飼育される家畜は豚や肉牛が中心で豚肉の生産は世界上位に入っています。このように、主食や飼料作物の栽培と肉をとる家畜飼育を組み合わせた混合農業が主体ですが、冷涼な北部では酪農もさかんで、バターやチーズの生産も世界の上位に入っています。
ジャガイモとビールの食文化
ジャガイモは飼料用以外に主食としての用途もあり、ジャガイモ料理はドイツを代表する食文化でもあります。パンが2食でジャガイモが1食という感じで、1日1回はジャガイモ料理が必ず出るのがドイツの一般的な家庭料理です。
また、ドイツと言えばビールと答えが帰ってくるように、ビール文化の国でもあります。飼料用とは別のビール用の大麦と苦味のもとになるホップを原料に作られるビールですが、やはりドイツならではのソーセージを食べながらビールを飲むのもドイツを代表する食文化です。
大麦とホップの生産ももちろん世界の上位で、南部の大都市ミュンヘンはビールの本場として知られますが、毎年9月下旬から10月上旬にかけては、世界最大のビール祭りであるオクトーバーフェストが開催されます。
ヨーロッパ最大の工業国
ドイツ工業の中心は北西部のライン川支流沿いのルール工業地帯です。ヨーロッパ最大のルール炭田の石炭に恵まれ、鉄鉱石をライン川の水運を利用して輸入し、鉄鋼業が発達しました。ドルトムントやエッセンが代表的な都市で、かつては隣国のフランスから鉄鉱石を輸入していましたが、閉山したため現在ではブラジルやカナダなどから輸入しています。
自動車の生産はヨーロッパで最も多く、ベンツで知られるダイムラー社やBMW、フォルクスワーゲンなど日本でもおなじみのメーカーの本拠があります。多くのメーカーの本社や工場がある南西部の都市シュトゥットガルトは自動車工業の中心都市で自動車博物館もあります。
このような重工業や自動車工業を含め、電子産業などの先端技術産業も加えてドイツはヨーロッパ一の工業国になっています。
ドイツの地理要点まとめ
- 日本より少し狭い国土で、人口はロシアを除くとヨーロッパ最大でゲルマン系ドイツ人が主体。
- 他のヨーロッパ諸国や中東諸国からの移民も多く、トルコ人は人口の3%以上を占める。
- 地形は北ドイツ平原、中部の丘陵地帯と古い山地、最南部のアルプス山脈に区分される。
- 西部をライン川、南東部をドナウ川が流れ、ライン川中流の渓谷は古城が多く世界文化遺産に登録。
- 国土のほぼ全体が西岸海洋性気候だが、イギリスにくらべると大陸性気候の特徴が顕著である。
- 農耕と家畜飼育を組み合わせる典型的な混合農業の国で、ライ麦の生産は世界第1位で豚肉の生産も多い。
- ジャガイモ料理とビールはドイツの代表的食文化で、ミュンヘンはビールの町として知られる。
- ヨーロッパ最大の工業国で、ルール工業地帯の鉄鋼業とシュトゥットガルトなどの自動車工業が中心。
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